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石牧建築 + ONE vol.1

浜松市天竜区春野町の自社工場イルボスコにて、石牧と大工の合田が大阪の栗材・名栗の専門店である橘商店の橘明夫社長をお招きして、木材業界のこと、名栗のことなどお話を伺いました。
プロット(骨子)なし。誰が何を話すかは分からない。思い思いにそれぞれが語るフリースタイルの座談会です。

石牧建築では、構造材は市内の山林部を持つ製材所のフジイチさんから、広葉樹は今回のゲスト橘商店さんから直接購入しています。通常のルートでは、山から伐り出された木は、製材所→材木店→プレカット工場→工務店へと流通されます。場合によっては、製材所の前に市場が入っていたり、材木店を何社も経由していたりする場合もあります。
石牧建築では、製材所から直接仕入れるため、品質の良い材料を比較的安価で、時には「このように製材してほしい」とリクエストして挽いてもらうこともあり、より自由な設計を可能にしています。
材木屋さんの橘さんに、この木材の流通について聞いてみました。

石牧  :木材の流通に関して言うと、普通の材木屋さんでも、橘さんにたどり着くまでには、多分何社か間に入らないとたどり着かないでしょ。少なくとも工務店が橘さんから直で材料を買うってことは

橘社長 :まぁ、珍しいよね

石牧  :もっと言えば、お親父さんの時代とかではほとんどない話でしょ

橘社長 :うん、そやね。僕の時代になって色々つながりができたのと、やっぱりホームページ作ったり、SNSをみんな活用しだしたから、直でつながる機会が増えたね。そういう意味では、ルートっていうかそういうのは崩れてきちゃってるのは確かやね。

石牧  :僕らはおかげさまで覚えたこともいっぱいあるし、市場に連れて行ってもらったりして、広葉樹使う量が変わってきたというか、建築そのものもちょっと変わってくるんだよね。そこがいいなあと思ってるんだけど、橘さんは工務店とか設計士さんと直接やりとりして、よかったなと思うことってありますか?

橘社長 :今までだったら、設計事務所が工務店に伝えて、工務店が近所の材木屋に言うて、それが珍しい材とかだった場合、材木屋や銘木屋さんを何軒か通って僕のところにたどり着く場合があるんです。けど、この間の中で、いろんなことが変わって僕のところに伝わってくる場合がある。要は伝言ゲーム。それがだんだん違うものになっちゃったり、寸法がだんだん長なっちゃってたり、だってゆとり見て頼んだりするじゃないですか。
そんなんで、よくあるのは柱材。床柱とかは3メートルで見積り注文があるけれども、実際3メートルも要らないでしょ?3メートルの原木はあるんだけれども、ちょっと小口割れとかして、ちゃんと使うとなると2900くらいになる場合がよくあるんです。直接やりとりしてたら、「これ床柱かなんかかな?」って思ったら、「ひょっとしたら3メートルも要らんのちゃいますの?」って聞いて、「ちょっとゆとりみてるから」ってことなら「ほな、2900でいけますか?」って、そういうやりとりして見積りしたら、単価も抑えられると思う。それが間にいっぱい入ってたら、なかなか難しいよね。

石牧  :うん。その辺がね、やっぱりこまめにコミュニケーションとってやれるのが大きい。

橘社長 :そういうやりとりが直接できるのは強みだと思うよ。ちょっとワンポイントで使いたいとか言うたら、目の粗い無地よりかは節があっても目がめっちゃかっこいい方がいいんちゃうかなあっていうので、「こんなんあるけどどう?」って提案できればその分安くできる。

石牧  :ねじれてるけど、めっちゃいいのあるよ、とかね(笑)

tayutau-HUTの大黒柱は個性的な楓の角材。よーく見ると捻じれています。

橘社長 :あれはまさしく、そういうやりとりがないと。石牧くんが近所の材木屋さんとかに探してって言うたら、もし見つかったってとんでもない値段になるかも知らへん。だって、あれを敢えて探せって言うたら、普通に四方無地探すより難しいから。

石牧  :もう、めちゃめちゃキラキラしてるの。確かに結構な捻じれだなって思ったけど(笑)

橘社長 :あれはでもほんとに超レアケース。あんなんもうない。ないというか、あれをしようと思ったら、あったときに買うて、どっちがリスクを背負うかやけど、石牧くんが自分で持っとくって言うんやったら、僕が在庫して乾かして売るよりかはそれは安くなるわな。やっぱりこういう場所がある建築屋さんのメリットやろね。ある程度使いたい材料をストックできてるから。

石牧  :難しいですよね。全部ゴミになっちゃう可能性もあるわけだし。僕たちがこうして在庫してやれるのは、設計が自社にあるからだね。こんな材料があるな、ってなるとそれを考えてプランしていくでしょう。そうすると細かいものだって全部使いきれる。

橘社長 :だから、石牧建築はそこがすごくいいとこやと思ってるよ。

石牧  :材料を無駄にしない。なんだったら幅ハギしてパネルだって作っちゃうからね。これもそう、杉だけど、こんなのチップにするしかないって言ってたけど、、、

橘社長 :え?これ?

石牧  :そう。これいい選木の杉の根玉で、受水槽を造るための木を出してて、受水槽って赤身の板目じゃなきゃいけないの。そうするとその側の部分の柾が余るんですけど、製材所としては「いや、これいい木だけどもったいないよなぁ」って言いながら、行き先がないからチップになっちゃってたんだよね。

橘社長 :でも、皮に近いところって、一番目が細かくて、一番いいとこやのにね。

石牧  :それを僕らは3センチくらいの幅に割って、削って、幅剥ぎしてパネルを作ると、赤身の柾のきれいな幅剝ぎパネルができるじゃないですか。

橘社長 :ああいう端材は僕はなかなか仕入れれないけど、建築屋さんとかはひょっとしたら宝の山かもしれんね。仮にアカンもんが入ってたって、それ見ながら使えるんやったらね。僕らはそれを売るってなったらちょっと。なんぼイメージでこんなん使える言うたって、自分が作るわけじゃないから、売る側はなかなか難しいよね。

石牧  :そうですね。そもそも、まず丸太買って製材する時点で相当なギャンブルなわけで、そのあと乾燥させなきゃいけないわけでしょ。

合田  :それだけの時間をかけてやっと売れるっていうことですよね。

石牧  :実際、外材ってさ、向こうで伐ったやつすぐ高温乾燥いれちゃうでしょ。もう全然、木じゃない感じ。高温乾燥で木の表面溶かして固めちゃうから、外が固まって、中乾かしてるでしょ。乾燥収縮の反動で割った瞬間全部反対側に反っちゃうんだよね。でも橘さんは天然で何年か寝かせて、それだけじゃ絞り切らない分を最後乾燥機入れてキュッとさせてるから、あれは手間ですよね。

橘社長 :だからあんまりお客様のため、お客様のためって言うてね。よりいい状態、よりいい状態ってしてたら、やればやるほどはっきりいって儲からない(笑)
だってね、普通の業者さんやったら、多分半年とか、ひょっとしたら3カ月くらいで人乾いれちゃうと思うのね。だってそれはなるべく早く乾かして売りたいやろうから。でも、ギリギリのとこでそれやってたら、どっかで不具合あるような材料もあると思うのね。それを僕はビビりなのかも知らへんけど、ほんまに全部がちゃんといい状態やなって思ってから乾燥機いれて最後にキュッて締めて、またそれを在庫して出すねんけど、多分よそさんよりかはもうちょい手間かけてやってるから、品質はいいと思うよ。

石牧  :僕はね、橘さんのところの材料は元の木がいいからっていうのもあるけど、手間をかけて真っ当なやり方してるからいいっていうのもあると思うんだよね。扱いやすいじゃん。キレもいいし。乾燥のスケジュールを短縮したものって、割ったらすごく動いちゃって、それを見込んだら、例えば60で仕上げたいっていっても80くらいで割っておこうかなって、そこでの歩留まりがめちゃめちゃ悪くなる。天乾できれいな材料っていうのは、割り返してもそんなに大きく動かないから、わりと使えるんだよね。

石牧  :でも、一般的に材木屋さんって、自分たちが挽いた材料が何になっているか分かんないんすよね。

橘社長 :そう。だからね、結局、流通の話に戻るけど、いまこういう直のやりとりになってて、一番嬉しいのは、やっぱり買ってもらった材料がどういうところに使われてるか分かるし、見よう思ったら見に行けるやんか。それって、次仕事する活力になるっていうか、嬉しいよ。僕らは今まで材木屋に卸してたら、よっぽどすごい仕事でない限り、どこに使われてるか分からへんことが多いから、ほんま言うと材木屋をちょっとくすぐる感じのなにかがあれば、こっちもよいいいもの出そうとかなるけど、数字だけだと分かれへんしね。

石牧  :いろんな思いを持って乾燥して、ものすごい労力かけてるのに、ただ高い安いだけだとね。僕らに材料を売ってくれてる人たちが、そういう思いで売ってくれているんだなっていうは、橘さんの話を聞くと分かるね。

橘社長 :だから、やっぱり思いが通じ合うところで仕事をしたいよね。間にいっぱい入っても、みんなが川上から川下まで思いが通じ合ってたらいいんやけど、どっかで途切れたりはして欲しくないよね。

石牧  :みんなにもそういうのを知ってほしいと思って、今回、武ちゃんが橘さんに直接話を聞けるのはすごくいいと思う。物の良し悪しだけじゃなくてね、そこに関わっている人たちもいて、いろんなストーリーがあるからね。

――お話はまだまだ続きます。
次回は広葉樹について。銘木市場のこと、好きな広葉樹についてなど語り合います。