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設計:村松篤設計事務所 / Photo:上田 明氏

SPACE SEVEN(G&O ISHIMAKI)設計コンセプト

私が住む浜松市は、かつて街の中心部が賑わっていた。休日になれば、家族連れが街に繰り出して買い物や外食を楽しんだり、カップルが映画を観たり、喫茶店で語り合っていたことを思いだす。春と秋のお彼岸になると駅からお鴨江さんまでの道端に屋台が並び、子供たちのはしゃぐ声に包まれたりしたものだ。時代の流れに伴い、車での移動が便利などの理由で、郊外の大型店舗や飲食店に人が集中していく。地元の老舗百貨店をはじめ、全国展開している大手デパートが中心部から次々と撤退していったことも、街が静かになっていった要因のひとつであろう。

では、ここ最近はどうか。かつて名店と呼ばれた飲食店の数は減ったものの、こだわりのグルメやファッション、小物や嗜好品の店が現れ、それ目当ての若者を見掛けるようになった。一方で、シネコンではなくミニシアター系作品を上映する映画館に注目が集まり、中高年が足を運んでいる話をよく耳にする。バブル崩壊からリーマンショックを経て、日本全体が緊縮思考に向かった反動からなのか、徐々に世の中の空気が和らぎ、消費を楽しむ指向に変化してきているように感じてならない。それはただ単に金銭だけではなく、有意義な時間を消費する豊かさと捉えていいかもしれない。

 場所は、浜松駅から徒歩で約10分。近くには親子連れが集まる科学館や、カルチャースクールで人気の社会保険センターがある。前面道路は通り抜けを利用する車の往来が激しく、歩道を歩いている人も見掛けられる。前出のセンターを利用する駐車場が道路を隔てた正面にあり、そこからはこの場所がよく見えることは想像できた。つまり、このあたりは女性(主婦)と子供たちが集まってくるエリアで、気軽にぶらりと立ち寄ってもらえそうな建築が相応しいのではないか。事務所という機能だけではなく、娯楽や鑑賞を兼ね備えたお休み処を設けられたらと考えた。

駐車スペースの間をすり抜けるようなアプローチの先にエントランスがある。ドアを開けると、複雑な空間の連続だ。手前には吹抜空間、通路の先には階段があり左手にはまた別の空間、奥には坪庭が見える。階段を折り返すとオーヴァーハングした空間があり、吹抜けの横を上がるともうひとつの空間が現れる。その脇の階段を上がる途中と上がった先に、それぞれ別の空間が用意され、まるで忍者屋敷のような構成だ。階段もひとつの空間として利用できるようにと考えた。

こうして、街中の狭小地に静かに主張する建築が出来上がった。個性的なイエローカラーの金属板に白漆喰壁を組み合わせた外観。ダークブラウンの木格子がアクセントとして入り込む。木造建築を手掛けていることをイメージさせる配色と植栽。環境に配慮していることを裏付けるそよ風を導入したギャラリー(G)&オフィス(O)は、ひとつの建築の中に7つの空間が入り組む。匠の技を見せる建築は、まちなかのオアシスとありうるであろう。(文:村松篤設計事務所 村松篤氏)

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