地元の木材を使った空間づくりをという設計依頼をいただいたのは2020年春、コロナウィルスという闇に世間が怯え切っている最中でした。
じねんグループ秋元社長が手掛ける店舗はもともと天竜材をふんだんに使用した力強さのある空間で浜松の地の食材を味わうことが出来るお店として地元の方から観光に来られた他県の方にも人気のお店でした。ですので、新店舗はただ木をたくさん使えばいいというものではなく、新しい木材の使い方が求められていると感じました。
現在、国はこの大径木を利用するためバイオマス燃料の利用やチップへの利用を促進しています。しかし林業の歴史が長い天竜の山には燃料やチップに利用するにはもったいない質の高い木がたくさん眠っています。今回の娯座樓リニューアル工事プロジェクトでは製材、流通、施工、設計が密にコミュニケーションを図り今の天竜の杉桧を一番きれいに見せる素材の使い方がされています。
例えば、奥の間の壁に使われている赤味の柾目板は希少な板材で10年前はとても高級な材でしたが、現在大きくなった丸太から、その辺材を利用し上手に木取り、手間をかければ入手できる板材となりました。繊細な柾目板の杉、桧は2021年の今もっとも旬な木の使い方となります。
20年前、旧店舗の新築時には春野山神社の御神木を1本伐らせていただき内装に使用したとお聞きしています。今回のリニューアル工事でも既存の板材を転用しています。自然の力強さを宿す御神木をダイナミックに使い、かつ今の天竜だからできる繊細な木の使い方両方を堪能していただける店舗に仕上がったと思います。
工法規模 | 鉄骨造3階建てテナントビルの内装 |
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店舗面積 | 161.17㎡ |
業態 | 飲食店(和食) |
設計・デザイン | しましま設計室 |
材料施工協力 | 有限会社 石牧建築 |