Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

住まいのツレヅレ01【台所編】

SPECIAL

住まいのツレヅレ01【台所編】

住宅の設計というお仕事をしているのでたくさんのご家族にお会いし、おはなしをお聞きします。当たり前ですが、同じ家族はひとつも無く毎回驚きや発見でいっぱい!そのたびに思うのです。世の中の常識や流行りに暮らしを合わせるのではなく、家族の個性や夢に合わせて家をつくることが大事だと。なので、このコラムでは一般的なことではなく普段住まいについて思うことをとーっても私的な目線でお話してみようと思います。これからはじめる家づくりや今の暮らしがちょっと楽しくなるヒントになればいいなぁと思いを込めて。第1回目は美味しいものがたくさん生まれるあの場所について、です。

はじめてのコラムは住宅の中でわたしが一番好きな空間について書こうと思います。

それは「台所」。

小さな頃は母が料理をする傍ら、冷蔵庫の前にペタンと座って学校であった事など一日の報告をしていました。

夕方の台所は温かな湯気とごはんのいい匂いがしてとても安心できる場所だったのです。

今はあまり料理をする時間が取れませんが、それでも毎日10分ほどは台所に立ち簡単なものを作ったりします。

小さな頃の記憶も相まって、台所に立つ時間はなんだかホッとする時間なのかもしれません。

**********

●憧れのキッチン

先日設計依頼を頂いた住まい手さんからある映画の中に出てくるキッチンが理想です、とお話を伺いました。

こういう設計依頼はこちらも想像力がかき立てられワクワクします。

その映画のシーンを再現するのではなく、そこからクライアントの好みを読み取り実際の設計にフィードバックをするのです。

小説や映画の中にはすてきなシーンがたくさんあり、

私もそんなシーンに出会ったら頭の引出しにストックし、ここぞ!という時に引っ張り出してきます。

ちなみに、キッチンだと映画「おくりびと」に登場する台所が印象的で好きな台所です。

みなさんは憧れのキッチンってあるでしょうか?



●使いやすいキッチンとは

家を建てるぞ!!となり、キッチンについて考える時、

イメージするのはお友達を招いたホームパーティー。

という方、とても多いです。

楽しいですよね、ホームパーティー。

私も大好きです、ホームパーティー(お呼ばれするのが)

でも。ちょっと待って!

そのハレの場、年に何回あるのでしょう??

実際の暮らしって実はもっとリアルなものではないでしょうか…?

言うこと聞かない子供に出かける準備をさせながら朝食を作ったり
(そんな時に限って牛乳をこぼしてくれたりするし…)

お仕事でドロドロに疲れて帰って30分で夕飯の支度をしなきゃいけなかったり
(レトルトに頼ったら頼ったで食後はプラゴミの山と格闘…)

普段の台所仕事って何より効率よく片づけたいのがホンネのはず。

なので、まずは機能的に動けることを一番に考えます。

*****

さて、では機能的なキッチンってどういうキッチンなのでしょう??

設計のノウハウはいろいろありますし、使う人によって変わってくるのですが

割と共通して言えるのが「縦に広いキッチン」が良いということ。

横に(平面的に)広いキッチンだとどうしても一歩二歩と動かなくてはいけなくて無駄な動きが生じてしまいます。

理想的なのはコックピットのようにコンパクトで、手を伸ばせば必要な物が取れるキッチン。

手元~目線の高さに物が仕舞えると便利ですよ。



(上は修業時代(Ms建築設計事務所)に担当した思い入れの深いキッチン)

********

●居心地の良いキッチンとは

キッチンは働く場だから機能的で無いといけない!

…散々言っておきながら、でも同時に居心地の良い場所でもあってほしいと思います。

みなさんはお台所に立つの好きですか?

それはどんな時でしょう?

私は夜遅めの時間に台所に立つのが好きです。

3本パックの人参をひたすら細ーーく千切りにしたり。

出張先で手に入れた珍しいお豆を茹でたり。

黒ずんできたステンレス鍋をぴかぴかに磨いたり。

静かな時間にごそごそと作業をするのが落ち着きます。

そんな時は作業用の白い灯りでなく、落ち着いた電球色の灯りも用意しておきたいな、と思います。

じっくりとお鍋を火にかける時は小さなスツールに座って本を読んだり、

とっておきのチョコとウィスキーを頂こうかな、と目論んだり。

だったらスツールを仕舞える場所が欲しいな、とか。

手帳をつけたりするスペースがあってもいいかもしれない、とか。

そんなことを考えます。

一方、朝の台所も気持ちが良く、

まだ誰も起きてこない時間にゆっくりお茶をいれて限られたひとり時間を楽しむママも多いと聞きます。

そんな時は台所に窓があるといいですね。

しかも小さな窓。

朝陽に照らされた緑がチラッと見えたり、シトシトと降る雨の音が聴こえたり。

起き抜けの頭にほんの少し外の情報を入れてあげるといいと思います。

あと、台所にあるといいんじゃないかと秘かに思っているのは、「小さな鏡」。

コーヒーのお湯を沸かす間にちょこっとお化粧をしたり

疲れた顔をしていたら無理やり「にっ!」と笑ってみるとか。

一日のスタートを調子よく切れそうです。

*****

キッチンって必ず暮らしの真ん中に鎮座しているもの。

みなさんは普段お台所でどんなことを考えていますか??

ちょっと振り返ってみて、どうぞ楽しいキッチンライフをお過ごしくださいね。






* * *

コラム筆者 | 設計 西久保