私が子供の頃は「猛暑日」なんて言葉は世の中に存在していなかったような気がします。
それが近年では「危険な暑さ」と言われ、天気予報の日本地図が真っ赤に染まる日が当たり前のように続くこともあり、むせかえるような暑さになることも。。。
日本では先人たちが日々の暮らしの中で、季節ごとに快適な住環境を生み出す工夫をしてきました。
たとえば夏の暑さ対策として、よしずを垂らしたり、建具を簀戸にしたり、庭に打ち水をするなど、先人の知恵は数々あります。
【写真】先人の知恵のひとる「簀戸(すど)」
・視線を遮りつつ風も通す
・視覚的にも涼し気
しかし現代では、生活習慣の変化や日々の目まぐるしい生活に追われてしまって、なかなか手間をかけることが出来ないご家庭も多いと思います。
ここで、現代における住まいの暑さ対策についていくつかあげてみましょう。
・軒を深くする
・庇を設ける
・開口部(サッシ)の性能を高める
・断熱性能を高める
・すだれや緑のカーテン
すだれ—数年前より緑のカーテンも暑さ対策として人気があり、ゴーヤなどの野菜なら収穫の楽しみもありますよね。
ただ、これはあくまでも軒や庇がない場合に日射を遮るための補助的なものでしかないように思います。
カーテンを開けると窓一面のゴーヤ!というのは、あまりおすすめのビューではないですし、シーズンが終わったら片付けも大変ですしね。
それよりもまずは建築の方で夏の刺激的な太陽の日差しをなるべく部屋に入れないようにできればベストではないでしょうか。
上のイラストは軒と陽射しの関係を表したものです。
(軒というのは建物の屋根で外壁より突き出している部分のことをいいます。)
夏は太陽が高い位置にあるので「夏至」と書かれた角度で日光が降り注ぎます。この場合、軒を少し深くすることで日陰となって日差しを遮ることができます。太陽の日差しが直接窓から侵入しないことによって、室内温度の上昇をおさえ、エアコンの設定温度の安定が図れるということです。
反対に冬は「冬至」と書かれたラインのように太陽の位置が低くなるので、程よい軒の深さであれば、暖かな日差しを遮ることなく室内に取り込めます。
また、上手にデザインされた深い軒や大きな庇は、外観のプロポーションを決定づけ、直射日光による外壁の蓄熱効果の軽減や、風雨による風化への抑制という効果もあります。
「軒は深い方が良い」
軒を深くするということは、夏の暑さ避けや外壁などを守るという観点から、住まい手にも家にも優しいのです。
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コラム筆者 | 設計 佐原